運動神経が悪い子供の特徴とは?その原因と改善方法をご紹介
自分の子供は運動神経が悪いのではないか?
もしかすると、自分の運動神経の悪さが遺伝したのかもしれない。
周りの子供に比べて、自分の子供が劣っているような気がして、不安を抱える親御さんは少なくありません。
しかし、運動神経の良し悪しに対し、正しい知識を持っている親御さんは実際のところそれほど多くはありません。多くの誤解を持ったまま、不安な日々を過ごしている親御さんも多くいらっしゃいます。
この記事では、運動が苦手な子どもの特徴から、運動神経が良い、悪いに関わる真実、さらに運動神経を良くするための具体的な方法まで、詳しくご紹介していきます。
運動神経が悪い子供の特徴とは?
運動神経が悪い子供には、運動機会の減少、それに伴う体の成長不足のほか、精神的な面の影響など、運動が苦手となることに通じる、共通したいくつかの特徴が見られます。
運動体験が少ない
運動が苦手な子供では、幼少期からの運動体験が少ない子供が多く見られます。
近年の都市化や遊び場の減少、放課後の習い事の増加、デジタル機器の浸透などは、子供たちの運動機会を奪い、運動が苦手な子供が増える大きな原因となっています。
・デジタル機器の利用時間が多い
運動神経が悪い子供には、スマートフォンやタブレット、テレビゲームなどのデジタル機器を長時間使用する子供も多く見られます。
デジタル機器の長時間使用は、子供が長時間室内で過ごすことにつながり、運動機会が減少する大きな要因の一つとなっています。
また、デジタル機器の利用で長時間同じ姿勢を続けることは、運動能力の低下以外にも、姿勢の悪さや視力の低下などの問題も引き起こします。
姿勢が悪い
運動神経が悪い子供は、姿勢が悪いこともよく見られる特徴です。
長時間のデジタル機器使用や運動不足は、姿勢の悪化を招きます。
姿勢の悪化は、体を支えるための筋肉が未発達となることにつながり、バランス感覚や基本的な運動能力の低下を引き起こす原因となります。
体が硬い
体が硬いことも、運動神経が悪い子供でよく見られる特徴です。
運動機会が減少した現代では、全身の筋肉や関節が硬くなり、しゃがむ動作のような基本的な動作すら困難な子供が増加しています。
特に近年では、子供ロコモ(ロコモティブシンドローム)と呼ばれる、立つ、歩く動作を行いにくくなっている子供が増えていることが問題視されています。
運動に対する苦手意識が強い
運動が苦手な子供は、身体的な能力だけでなく、運動そのものに対する苦手意識が強いことも特徴の一つです。
これには「できない」という失敗経験が重なることで、運動を「やりたくない」と感じるようになり、さらに運動機会が減少する、運動ができなくなるという悪循環が関係しています。
さらに、運動に対する苦手意識は、単に運動能力だけでなく、子供の自己肯定感の低下にもつながるため、子供の成長への悪影響が懸念されます。
「 運動神経が悪い子」は存在しない?
先ほど運動神経が悪い子供の特徴を紹介しましたが、我が子の運動神経の良し悪しを心配されていらっしゃる親御さんには、その心配の前に知っておいていただきたい重要な事実があります。
それは「運動神経が悪い子」は存在しないと言う事実です。
そもそも運動神経が良いとは?
運動の得意、不得意で使われる「運動神経」とは、一般的に「運動能力」を指す言葉です。
これは、筋肉を動かすための神経の総称である医学的な「運動神経」と呼ばれるものとは、意味合いが少し異なるので混同しないように注意しましょう。
それでは、一般的に「運動神経が良い」と言われる状態とは、どのような状態を指すのでしょうか。
スポーツ科学の分野では、運動神経の良い悪いには「コーディネーション能力」が密接に関係していると言われています
コーディネーション能力とは、以下のような要素で構成されています。
・リズム能力
・バランス能力
・変換能力
・反応能力
・連結能力
・定位能力
・識別能力
コーディネーション能力とは、簡単に言えば「体をどれだけ思い通りに動かせるか」に関わる能力です。
つまり、「運動神経が良い=コーディネーション能力が高い」と言えるでしょう。
さらにこのコーディネーション能力は、生まれつきのものではなく、幼少期からの様々な運動体験を通じて徐々に獲得されるものです。
つまり、元々「運動神経が悪い子」というのは存在しないということです。
「運動神経が悪い」と感じる場合、それは運動体験が不足しているために、コーディネーション能力が十分に育っていない状態なのです。
ですから、運動神経が悪い子でも、適した運動体験を重ねていけば、運動能力の改善は可能です。
「運動神経が悪い」は子供に遺伝する?
「自分が運動音痴だから、子供も運動が苦手になってしまうのでは…」
このような不安を抱える親御さんは少なくありません。
結論から言えば、現在では「運動神経が悪い」は遺伝するものではないというのが、一般的な考えとなっています。
先ほども述べたように、運動の得意、不得意には、コーディネーション能力が高められているかどうか、そのための運動体験を子供の頃から重ねていられるかが大きく関わっています。
さらに、運動神経が悪い子供の特徴で述べたさまざまな特徴は、その多くが後天的な生活習慣や運動習慣が深く関わっているものばかりです。
プロスポーツ選手の子供に運動が得意な子が多くいますが、これは幼少期から自然と体を動かす機会が多い家庭環境になる、親が運動やスポーツに関する正しい知識を持っている、運動に対してポジティブな価値観が育まれやすいなど、運動能力の向上に適した環境などが整っていることが関係していると考えられています。
つまり、運動能力の差は遺伝的な要因よりも、家庭環境や生活習慣による影響が大きいのです。
そして、多くの研究者やスポーツ指導者が指摘しているように、運動能力は適切な働きかけと継続的な運動体験によって、誰でも向上させることが可能です。
運動神経が悪い」と発達障害の関連性
ここまで運動能力には、素質や遺伝は関係がないお話をしてきました。
ですが、運動が苦手な子供の中には、単なる運動経験の不足だけではない要因が隠れている場合もあります。それが発達性協調運動障がい(DCD)です。
発達性協調運動障がい(DCD)とは?
発達性協調運動障がい(Developmental Coordination Disorder:DCD)とは、知的発達には問題はないが、協調運動が必要な動きや細かい動作を上手く行えないという発達障害の一種です。
厚生労働省の発表では、DCDは5〜11 歳の子どもの 5〜6%に見られると報告されています。
DCDがある子供には、以下のような特徴が見られます。
・年齢相応の協調運動がスムーズにできない
・日常生活での動作にぎこちなさがある
・よい姿勢を保つことが難しい
・細かい手先の作業が苦手
例えば、DCDの子供は、以下のような場面で困難を感じることがあります。
・ボールを投げる・受け取る動作
・箸や鉛筆を使う細かい作業
・靴ひもを結ぶ
・自転車に乗る
・階段の上り下り
・早めの診断で改善は可能です
DCDは早い段階で障がいに気づき、適切な支援を行えば改善効果が期待できます。
このDCDの子供に対する支援は、できるだけ早期に開始することが望ましいとされています。
専門家による適切な評価と支援を受けることで、運動能力の向上だけでなく、自己肯定感の回復にもつながるため、発達障害の子供が起こしやすい、うつやパニック障害などの防止にもつながります。
※すべての運動の苦手な子がDCDではありません。子供の成長には個人差があります。どうしても気になる場合には、まずは専門家による適切な診断し、必要に応じて専門的な知識に基づいた支援を行っていくことが重要です。
運動神経を良くするために重要なことは?
運動神経を良くするためには、幼少期から運動体験を積むこと、年齢に応じた適切なアプローチを行うことが重要です。
特に、発育発達段階においてゴールデンエイジと呼ばれる重要な時期が、運動能力の向上に大きく関わることが知られています。
ゴールデンエイジを中心とした3つの段階
子供の運動能力発達には、ゴールデンエイジ(9~12歳)を中心として、3つの重要な時期があり、それぞれの段階における成長や行うべきことが異なります。
プレ・ゴールデンエイジ(5~8歳)
神経系の発達は早く、プレ・ゴールデンエイジの時期には8割が完成すると言われています。
そのため、プレ・ゴールデンエイジでは、なるべく多くの動きを体験しておくことが、次のゴールデンエイジにおける成長促進につながります。
走る、跳ぶ、投げるといった基本動作に加え、バランス感覚を養う遊びやリズム遊びなど、多様な動きを経験することを心がけると良いでしょう。
ゴールデンエイジ(9~12歳)
ゴールデンエイジは、運動神経の発達が完成に向かい、初めて見た動きを即座に実践できるなど、もっとも運動能力が伸びやすい時期です。
この時期は、複雑な動きの習得やスポーツの基本技術などを身につけるなどを行うのに適した時期であり、運動経験を積み上げることで、運動能力の大幅な向上が可能です。
ポスト・ゴールデンエイジ(13~15歳)
ポスト・ゴールデンエイジでは、すでに神経系の発達はほぼ終わっていますが、その代わり筋力や持久力が発達する時期となります。
そのため、筋力トレーニングや持久力など基礎的な能力の向上、ゴールデンエイジに身につけた技術を磨き上げるなどを行うことに適しています。
ゴールデンエイジを過ぎたら手遅れ?
ゴールデンエイジを過ぎたからと言って、全くの手遅れとなるわけではありません。
たしかに、成長期を過ぎた後では、ゴールデンエイジほどの驚異的な成長を望むのは難しいかもしれませんが、適切なトレーニングを行うことで、時間はかかっても運動能力の改善は可能です。
また、成長には個人差があるため、焦りすぎることなく、それぞれの年齢や発達段階に合わせた適切なアプローチを行っていくことが重要です。
運動神経を良くするためにおすすめの対策
これまでの内容を踏まえ、子供の運動神経を良くするためにおすすめの対策についてご紹介していきます。
家庭での働きかけ
先ほどご紹介したゴールデンエイジの話からも分かるように、運動能力の成長は幼少期からのアプローチが重要です。
日常生活の中でさまざまな動きを体験できるよう、運動体験の小さな積み重ねを心がけていきましょう。
幼少期においては、遊びを通じた運動体験を行う機会を持ち、ゴールデンエイジ以降には部活や習い事を通じた技術の習得を行う機会を提供するなど、運動を行う環境を整えていくことが重要です。
ただし、運動能力の向上には、本人の自発的な意欲も欠かせないため、親が強制して行わせるのは良くありません。
本人の意向も尊重しながら、また遊びの中では親も一緒に楽しみながら行うなど、親子で協力しながら取り組んでいく必要があります。
外部の専門家の力を借りる
家庭での取り組みは、子供の運動能力向上に重要ですが、外部の専門家の指導を受けることは、より効果的な運動能力の向上に役立ちます。
子供の運動能力に不安を抱えていたり、発達障害の可能性を心配したりしている親御さんは、一人で悩まず、専門家に相談するのも良い対策になります。
たとえば、体操教室の講師のような外部の専門家は、動きのスペシャリストなので、子供に足りない能力を見抜き、それを育てる能力に優れています。
ときには外部の専門家の力も借りながら、バランス良く子供の運動能力を成長させてあげましょう。
運動が苦手な子供におすすめのスポーツ
以下には、運動が苦手な子供でも始めやすく、運動能力の改善に役立つスポーツをいくつかご紹介します。
・体操教室
特におすすめなのは体操教室です。
体操は、基礎的な運動能力を総合的に向上するために最適です。
動きの専門家である講師のもと、個人のペースで段階的に進められ、マット運動や跳び箱など、様々な動きを通じて運動能力の向上が期待できます。
また、さまざまな動きを学べる体操は、運動能力と密接に関わる、コーディネーション能力の向上にも効果的です。
・外遊び
幼少期の子供でも最も手軽に始められる運動として、公園などでの外遊びが挙げられます。
たとえば、ブランコはバランス感覚の向上につながりますし、 砂場遊びは手先の器用さの発達につながります。 鬼ごっこは全身運動や反射神経の向上にも役立ちます。
日頃の運動遊びの中には、スポーツ庁が推奨する「幼少期に身につけたい36の基本動作」が含まれていると言われているため、幼少期からさまざまな遊びを体験させてあげると良いでしょう。
・スイミング
全身運動で体幹が鍛えられ、年齢を問わず始められるスイミングも、運動が苦手な子どもに適したスポーツです。
水泳教室では、水慣れから段階的に進められるため、運動が苦手な子供でも無理なく成長させることが可能です。
・子供が自発的に楽しめる体験を
運動神経を良くするためには、子供が「楽しい」と感じられ、自発的に継続できる運動を見つけることが重要です。
子供の成長は個人差が大きいため、同じ年齢でも他のこと差が出るのはよくあることです。
周りの子供と比べて親が焦りすぎないよう、決して無理強いすることなく、子供の興味や適性に合わせて、できることから始めていきましょう。
まとめ
今回の記事では、運動が悪い子どもの特徴から、その原因、対策をご紹介してきました。
今回の話で重要なポイントは、「運動神経の良し悪し」は生まれつきのものではなく、幼少期からの運動体験の積み重ねによって育まれるということです。
運動が苦手な原因は運動体験の不足が主となりますがが、中には発達性協調運動障がい(DCD)の可能性もあるため、気になる場合は専門家への相談も検討しましょう。
DCDと診断されても、適切なアプローチを通じて運動能力の改善は可能ですので、過度に心配する必要はありません。
運動能力の向上には、ゴールデンエイジと呼ばれる重要な時期があり、この時期に適切な運動体験をすることが重要なこともお伝えしました。
ただし、ゴールデンエイジを過ぎたからと言っても、決して手遅れになるわけではありません。
子供の運動能力の向上に大切な親御さんができるアプローチは、子どもが楽しみながら、自発的に体を動かせる環境づくりです。
家庭での働きかけ、ときには遊びを通じて一緒に体験したり、体操教室などの専門家の指導の機会を設けたりするなどして、子どもの成長をゆっくりと見守っていきましょう。
焦らず、無理強いせず、子どもの興味や適性に合わせて、できることから始めることが、運動能力向上への近道となります。
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